「さぬきうどん」のお話

子どものころ、祖父のうどん店には、いつも温かい湯気が立っていました。学校から帰って、その湯気を見るたびに、「うどんが食べたい」と自ら手伝ってうどんを打っていました。さぬきうどんは、わたしにとって「お帰りなさい」という温かさ。その湯気に包まれた幸せを、みなさんにお届けしたいのです。

そのために、うどんづくりの技を磨き鍛え続け、「さぬきうどん品評会」に第1回目から23年連続で出場しました。農林水産大臣賞をはじめ数々の賞をいただき、2002年からの「さぬきうどん技能グランプリ」では、各部門で受賞。第2回大会では、工場も含めた各店が16もの賞を受賞することができました。

さぬきうどんの飽くことのない魅力は、小麦と水と塩という素材のシンプルさにあります。それだけに、素材選びは決して妥協しません。そのなかで、長年抱いてきたのが、香川県産小麦でさぬきうどんを打つ夢でした。それをかなえてくれたのが香川県が開発した「さぬきの夢2000」でした。NHKテレビの「プロジェクトX」で紹介されましたが、開発から立ち会ったこの品種をさぬきうどん用小麦の代表格に育て上げたいと願っています。これには、瀬戸の光を浴び讃岐の大地で育った味と香りがあるのです。

「さぬき麺業」では、工場見学やうどん打ち体験を行い、学校をはじめさまざまな場所でうどん教室を開いています。自分で打ったうどんの味は、忘れられないもの。それは、ふるさとの原体験や香川の思い出になります。うどんの味を伝えるだけではなく、うどん文化そのものを伝え広めていくこともわたしの使命です。

うどん打ち体験など、学校をはじめさまざまな場所でうどん教室を開いています。
香川のさぬきうどんから、日本の食を代表するさぬきうどんへと育て上げたい。まだまだ眠れぬ夜が続きます。「寝ても覚めても、うどん。麺業三代、八十年の味」を幸福な湯気とともに、みなさまにお届けしたいのです。
さぬき麺業株式会社
代表取締役社長 香川 政明